観光地発展のキーワード「立体化 ①点から線、面へ」
観光地の観光スポットを点と考えると、スポット(点)を結ぶと線になり、線を結ぶと面に、平面を組み立てると立体になるといったことをお話させていただきます。
おそらく大きな観光地には必ず観光客の多くを向かわせる太い観光の線(観光ルート)ができている筈です。その太い線からいくつかの観光素材(点)が延び、嗜好によって選択ができるようになっているのは面的な観光地化が進んでいること。逆に太い観光の線ができていない観光地は発展途上にあると考えられます。それは発展のチャンスを持っている(伸びしろがある)ということです。
但し、ルートができないのは作らないのではなく、作れないんだというのが観光関係者の正直な声だと思います。
できない理由はいくつもあるでしょうがやる気があっても観光スポットが分散しているというのが一番多い理由かと思います。分散したスポットの結びつけをやればいいじゃんというのは観光ビジネスの実態を知らない方の反応かと思います。自治体や観光協会が結びつけのキーマンになるわけなのですが、そういった団体において最も重んじなければならないのが「平等」なので、ルート作りによって地域に誘客の差が大きくなるのは最も懸念することです。
観光ルートについてはレストランのメニューに例えると理解しやすいと思います。観光客の多くはその地域を初めて訪れます。初めてフレンチレストランに行った時の自分を思い出してみるといいでしょう。メニューの中に記載された様々な料理や飲み物を見て、初めての人がコースを組み立てるのはまず無理ですし、うまくコース化できるわけがありません。観光もそれと同じで、ジャンル別に観光スポットを紹介してもそれを組み立てることは観光客にはできないのです。地元の方ならABCDのスポットを巡るのは日帰りでは無理だとわかっても、観光客にはわかりません。結果的にAとDを期待していたのにABCしか回れなかったのを観光客のせいにしてはいけませんよね。フレンチレストランでも初心者が頼るのがシェフのおまかせコースだったり、今日のディナーコースだったりするのです。観光も同じだと思いませんか。
といっても、ルート化をやりたくてもできないのです。といっては話が先に進みませんので、まずは複数のルート作りから始めることをお勧めします。主な観光スポットを網羅する複数のルート。そのルートの中から太い線が生まれてくるかどうかは観光客が決めてくれます。おそらく観光関係者も予めどのルートがメインになるかは見当がつく筈です。ただ公平に地域の中にいい意味での競争を起こさせることが重要で、結果的にその地域全体の活性化につながります。
ルート作りのポイントは観光客の立場に立ってルートを作ることですが、どうしてもおススメの観光スポットを無理やりつなげてしまうことになってしまいます。そうすると移動に無理ができ、「スポットを回り切れない」、「帰りの交通機関に間に合わなかった」、「ゆっくり食事ができなかった」などの不満足な観光となり、結果的に再訪はおろかマイナスなクチコミにつながりかねません。
無理せずにゆったりとしたルートを作り、その中に食事や休憩場所を組み込み、地域を感じられるちょっとした散歩コースなどを入れることで線から面になっていきます。珍しい物を見に行くだけの観光から、観光客が普段の生活と少し違うその地域の生活を感じられる観光にしていくことがこれからの観光の方向性だと思います。
インバウンドも期待するものが変化していく筈で、日本人も外国旅行に求めるものは地元の人と同じ生活体験がしたくなっているのと同じことです。根っこの文化が気に入った方はリピートにつながります。